はじめに
〈古典部〉シリーズ第五巻『ふたりの距離の概算』において、折木たち古典部部員が参加したマラソン大会(星ヶ谷杯)のコースを考察する。
なお、〈古典部〉シリーズはあくまで飛騨高山を”モデル”とした作品であるため、現実世界と作品内の描写が異なる可能性はある。その時は、できるだけ作品内の描写側に寄せて考えていきたい。またこれに関連して、アニメでは神山高校のモデルが岐阜県立斐太高等学校であるため、それに伴い神山市=高山市として以後記載していく。
- はじめに
- 序章 ただ走るには長すぎる
- 一章 入部受付はこちら
- 二章 友達は祝われなきゃいけない
- 三章 とても素敵なお店
- 四章 離した方が楽
- 五章 ふたりの距離の概算
- 終章 手はどこまでも伸びるはず
- 実証編
- 結果
序章 ただ走るには長すぎる
0km地点から1.2km地点
出来事:スタート、里志①
キーワード:神山高校とその前を通る道
まず星ヶ谷杯の大まかな情報を整理すると
・毎年5月末開催、金曜午前9時スタート
・距離はおよそ20km(!)、折木曰く、「学校の裏を一巡りする」
(『米澤穂信と古典部』によると米澤先生の母校、斐太高校のマラソン大会では15kmだったとあるので、ここは15~20kmあたりと考える)
描写を見ていくと、
「学校の前を流れる川に沿って少し走り、最初の交差点で坂道に入る。」
「~市街地をバイパスする道の一部にあたるので~」
「~歩道と車道を隔てるのは一本の白線だけで縁石がない。」
まず斐太高校の前の道は大八賀川という川が流れており、それに沿った道を北上すると宮川という川に合流する。学校前の道路を北上すると県道460号という市街地をバイパスする道に合流するため、この名もない道路がルートと考えられる。
その後、
「この道は一キロあるかないか。」
「コースは大きく右に曲がる。」
「最初の交差点で坂道に入る」
「しばらくはだらだら坂~丘のてっぺん付近では心臓破りの坂になる。」
上の写真に写っている交差点までが700mで一キロ弱であり、右折すると緩やかな傾斜が続いていく。
以上より、序章で描写されているルートは↓と考えられる。
一章 入部受付はこちら
1.4km地点から4.1km地点
出来事:伊原
キーワード:だらだら坂・心臓破りの坂・平坦な道
描写を追いかけていくと
「学校の裏手の山に付けられた道は~」
「坂はいよいよ勾配を増し、~」
「登り切ったら~100メートルほどだが平坦な道が続いている。」
とあり、ある程度の登り坂が続くことがわかる。しかし、ここからは道路が多数存在しはっきりとしない。
そこで、ある描写に注目すると、
「道端に小さな祠があった。何を祀っているのか知らないけれど、取りあえず心の中で手を合わせておく。」
とあり、地図の右上にある松森神社をストリートビューで見ると
鳥居の向こう側に祠があり、おそらくここのことだろう。
そして、序章の終点から松森神社を結ぶルートだが、高校生がある程度集団で走れる程度の道幅を持つ道を探すと、
↑のようなルートになる。距離は2.5kmと少し短いが、おおよそこんな感じかな。
二章 友達は祝われなきゃいけない
5.2km地点から6.9km地点
出来事:里志②
キーワード:ヘアピンカーブの下り坂、直線路
松森神社以降の道筋を辿っていくと、ヘアピンカーブの下り坂は三か所ある。
絞り込むために、ある描写に注目すると、
「~カーブを曲がると~神垣内連峰の山々が遠くに見える」
とある。神垣内連峰については『連峰は晴れているか』で少し触れられている。三千メートル級の山々が連なるということは、立山などを中心とした飛騨山脈とみていいだろう。
三つのルートから見ることのできる景色を大雑把に考えると上の図のようになり、神垣内連峰を望むという観点なら②③のルートが妥当ではないか。
そして②③をストリートビューで確認すると、
両方とも赤矢印で示しているのが飛騨山脈(と考えられる。何せ行ったことがないので)。これ以上は絞ることはできなかったので、いったん保留。
余談ではあるが、『連峰は晴れているか』で神垣内連峰の2つの山の名前が出てくる。その名も鐙岳(あぶみだけ)と錣岳(しころだけ)。鐙は馬具の一つで足を乗せて踏ん張るところ、̪錣は武士の兜の後ろ側に付いている首元を守るものである。〈古典部〉シリーズにおいて実在の地名は使われないので、飛騨山脈にある乗鞍岳、剣ヶ峰や穂高岳など武具や馬具にちなんで名付けたのかな……なんて考える。こういう架空の地名を考えるのって凄い楽しそう。
そして、6.9km地点。
「勾配もなく、道はひたすらまっすぐに続いている。遥か彼方に小山が見えるが、コースを知っている俺は自分があれを登ることを知っている。」
のちの第三章でも触れられるが、この山は陣出という地方(千反田の家のある場所)に繋がる道中にある。なので、まずは陣出がおおよそどのあたりなのかを調べていく。
『米澤穂信と古典部』で陣出は神山市北東部一帯とされている。さらに女子高生が自転車で通学できる距離と考えれば、陣出はおそらく丹生川(にゅうがわ)地方と考えられる。
『いまさら翼といわれても』では神山市文化会館(高山市文化会館と考えていいだろう)からバスで30分ほど、という描写もある。
……ちょっと近い気もするが、取りあえず丹生川の中心部を目的地に。
6.9km地点から8.0km地点まで直線が続くことを考えれば、先ほど提示した②のルートがより適しているように思われる。ということで、第二章のルートは以下。
陣出につながる小山が見つけられなかったり、距離が少し短かったりと完全ではないが、自己満足なので許してくれい。
三章 とても素敵なお店
8.0km地点から11.5km地点
出来事:特になし
キーワード:登り坂と下り坂
二章で丹生川の中心部まで来たが、このあたりから距離面で原作との整合性が取れなくなってくる。三章は陣出(=丹生川)に入るあたりで終わるので、二章と同一視していいでしょう。
四章 離した方が楽
14.3km地点から14.6km地点
出来事:千反田
キーワード:陣出、田園地帯、バス停、水梨神社
丹生川中心部からどこに向かうか。四章は、折木がバス停で千反田を待つ場面である。現地の路線図を調べると、ちょうど高山市街に向かう国道158号線をバスが走っているため、学校へ帰るルートとしてもこれは最適だろう。
描写を追いかけると、
「コースは森のふちに沿っていたが、その森は鎮守の森だったようだ。水梨神社の前で道は再び川沿いへと移っていく。」
水梨神社はどこにあるのか。ここは『遠回りする雛』にも登場する神社で、モデルは高山市南部にある水無神社と考えられている。コースからは離れた場所にあるので、今回はいい感じの神社を見繕おう。探してみると、
ここかな。
鎮守の森にも囲まれてるし、いい感じ。ただ、小川に沿うという条件が満たせないが、これは後述する五章で解決しよう。
五章 ふたりの距離の概算
17.0km地点から18.9km地点
出来事:大日向
キーワード:小川沿い、峠道、バイパス道路、荒楠神社への近道
「郊外のバイパス沿いにまっすぐ伸びていたコースは、行く手の大きな交差点を嫌ってか、道幅の狭い住宅街へと入っていく。神山市の中でも特に古い一角で、~」
「郊外のバイパス」が国道158号として、古い住宅街へ向かう。
雰囲気があるいい町並みだ。そしてちょうど小川にも沿っている。
折木は細い水路にかかる小さな橋で大日向を待つ。2人はこのあとコースを外れていってしまうけど、こちらは正規ルートを探っていこう。2人の近道は荒楠神社前で合流する、と書かれてあるので、いい感じに道を探すと、
※荒楠神社のモデルは日吉神社とされている
どうでしょう。
終章 手はどこまでも伸びるはず
19.1km地点から
出来事:里志③
キーワード:荒楠神社参道
最後は学校に帰るだけ。あまり描写がないので、マラソンといえば川沿いだろう、というイメージの元、宮川沿いを走るルートにしてみる。そうしてできあがったコースはこれだ。
18.2km。距離も申し分ない。なかなかいい結果が得られたね。
じゃあ、走るか。
実証編
来ちゃった♡(青春18きっぷ)
朝8時。マラソン日和の清々しい朝。
行くか。俺が折木奉太郎になるんだ。
長距離走なんて高校生ぶりだ。
早朝の清々しい空気を直に味わえるのはランニングの特権かもしれない。全能感が湧いてくる。
ハァ……ハァ……。待って、普通にしんどいかも。
快晴すぎる。全然暑くてクソワロタ・・・ワロタ・・・
夏すぎないか?
……。
あ!折木と千反田が話した神社ってここっぽくね!?
この道路を見渡せる感じ……ぴったりすぎる……
それにしても坂が多すぎる。足がめちゃくちゃ痛くなってきたし限界かもな……
じゃあね、ホータロー。
俺……俺は福部里志だったのかもしれん。
(熱中症)
結果
成し遂げました。