軽快ブログ

冬が好き

日常への根付きと落差について【東北周遊day1】

祭り、というものがあまり好きではない。

人混みが嫌い、というのもあるけど、自分が100%楽しめてないものを他人が楽しそうに受け取っている姿に単純に嫉妬している、というのもあるかもしれない。その嫉妬は惨めさに変わり、皆と同じものが楽しめない自分に引け目を感じてしまう。

まあ要するに、祭りを楽しめたことが無いのだ。町内会でやるような小さな祭りから中高の文化祭、家が建った時の地鎮祭、大学の学祭、河川敷の花火大会に至るまで全く。なんなら最近は足を運んですらなく、縁遠いものになってしまっていた。

 

しかしまあ、得てしてこういうところに金脈は埋まっているもので。祭りというものを正面から理解すべく、一番有名な祭りに行くことにした。青森ねぶた祭

 

そうと決まれば月金で会社に有休を宣言して準備を整える。新幹線で行くか迷ったが、他にも行きたいところがいくつかあり、レンタカーいちいちというのも面倒なので自家用車を選択。片道800kmの道のりに備えて、木曜21時に自宅を出発。知らんサービスエリアで仮眠して、8時に福島へ。

はー最高。普段なら職場のゴミ箱に紙パックの野菜ジュースを叩き入れて死んだ眼でPCを起動しているはずの時間に、山の上から新幹線と車を眺めて、蝉の声に耳澄ませちゃったりして高地の風で涼んでいる。つくづく贅沢とは日常との落差なんだと思い知る。

 

霜降りのラジオでも言っていたけれど、東日本の蝉はやかましくなくていい。関西のクマゼミなんてのは朝一番からシャワシャワ元気良かったものだから、部活で撮るビデオに1つも人間の音声が入らないなんてのはままあった。それがこっちはミンミンミン……なんて風情すらある。暑すぎてくたばってるだけの可能性もあるけれど。

 

たっぷり優雅に自由の朝を味わって、少し暑くなってきたので退散。さらに北へ。

伊達政宗の像でも見ようかと仙台まで来たものの、交通量がそこそこ多いせいかなんとなくどこにも停めづらい。う~ん、と思いながらあてどなく運転していたら郊外まで来てしまったので、申し訳程度に地元チェーンのファミレス、まるまつでブランチとして仙台を諦めた。特に牛タンを食べるわけでもない。

SAで仮眠しながらぐんぐん北上していくとデカい山が見えた。デカい山は好きなので高速を降りて確認する。

岩手山。200年前の噴火で焼け野原になった場所がまだ残っているというので見学。誰も人がおらず終末感ある風景が広がっていたが、この世の終わりにしてはいつもの暑さすぎる。もっと熱いか、凍えるぐらい寒くないと滅亡甲斐がないってもんですね。

 

八幡平アスピーテラインを抜けて岩手県秋田県へ。東北は県の位置関係がまだ染みついてないので書かないと覚えられないな。

人の手が入ってなさすぎる。

 

鹿角市を通って弘前へ。尾去沢鉱山行きたかったけど時間なく断念……

ホテルは寝れたらいいと思ってるので基本最安値なんだけど、弘前に関してはドーミーインに最高の屋上露天風呂があるので積極的に選んでいきたい。言うても2回目とかなんですけど。

車停めて、サクッと風呂入っていよいよねぷたへ。ふらいんぐうぃっち好きなので、青森の前にまずは弘前ねぷたを見ようという魂胆。

祭りというのは、部活の大会やプロのスポーツ興行とは違うものだと実感した。近いのは小学校の合唱コンクールかもしれない。

祭りは、語弊があるかもしれないが、全員が本気でやっているわけではない。ねぷたは町内会や学校、企業、有志団体単位でねぷたを作成して練り歩く。ねぷた運行にはたくさんの人間が関わっており、引き手や指示役、笛と太鼓の演奏役、運行に参加して練り歩く人、そして俺が知りえないような裏方も含めて、全員が高い熱量をもって参加しているわけではない、ように思える。着飾って声を張り上げる幼児たちは何のこっちゃわかんないだろうし、歩くだけの親世代、掛け声を出すことを見るからに照れている中高生、いろんな人たちがいた。

これは悪いニュアンスはなく言うけれど、「やらなきゃいけないこと」としてねぷたが参加者に根付いているのだろう。楽器演奏して練り歩く、という枠で部活のマーチングバンドと同じ枠にカテゴライズしてしまうけど、部活はやりたいからやっている(という人が大半であろう)、というところで大きく違う。文化風習として地域に根付いている祭りは、参加することが自然で当然なのだ。

そうなったときに、このねぷた祭りの文化風習としての吸引力に驚く。見る限り、全世代が参加しているのだ。保育園児から学生、若者に親世代、直接の参加はしなくとも椅子などを持ち出して老人たちは沿道で観覧する。「やらなきゃいけないこと」とはいえ、それを当たり前に行うことの難しさは選挙の投票率が証明している。その吸引力は青森三大ねぶたとして数えられる知名度、歴史、魅力に裏付けされたものなんだろうな。

 

みたいなことを好きな人に話したら、そういうバックグラウンドがあるって憧れるね、と言っており確かに……と思った。お互い転勤族なので土地に根付いたアイデンティティを強く持っておらず、まあでも隣の芝はってやつかもね~的な話に落ち着く。

 

そんなことはよくて。ねぷたはそこそこで切り上げ、静まり返った住宅街をうろついてホテルに帰る。

ひとり焼き肉をかまし、大浴場で気持ちよくなってこの日はおしまい。祭りのことを少しは理解できたかな。7/31,8/1