軽快ブログ

「夏が来るね」そう言って君は

『冬期限定ボンボンショコラ事件』読んだよ!

・読んだよ!

 

・帯の「掉尾を飾る」普通に読めなかった。ちょうーび、もしくはとうーび、らしい。尾を掉う、ふるうことから転じて最後に勢いが増す様子。株式相場の用語でも使われてる。ふーん。

 

・GW最終日、駅に買い物行くついでにスタバで読んだ。出入り多そうだし場としては微妙かと思ったけど、イオンの中だからかそこまで混んでもなくて普通に良かった。喫茶店開拓も緩やかにやっていきたいところ。

 

・完結編ということで、楽しみと同時に怖さがあり。米澤穂信のシリーズものの”終わり”は小市民がはじめて(のはず)であり、これによって一種の基準点ができる。言っちゃえば、古典部シリーズの終わり方に「こうかもしれない」という道筋が1本見えるということだ。それが正しいにせよ間違ってるにせよ。

 

・わりとビター系、すっきりしない終わりも多く書いている米澤穂信だけど、シリーズものでは果たしてどうなのか。わたし、気になります!(違

 

・以下、内容にがっつり触れてます。読んでから読んでほしいかも!

読んだ?

じゃあ書くか。

 

・事後諸葛亮だけど、シンプルな、さらっとした終わり方ではあるだろうな、とは思っていた。『米澤穂信古典部』でも書くべきことを書いたらさっと幕が下りてしまう感覚が好き、と書いていたし、実際読んでても多くを語らない職人的こだわりを感じることが多かった。

 

・実際さらっとした終わりだったけど、それでも最後の数ページはめちゃくちゃ良かった。ていうか文末解説が上手いこと言いすぎている。これを解説で書けたのめちゃくちゃ気持ちいいだろうな~

 

・「わたし、京都がいいと思う」←これ、夏目漱石が訳したことになりませんか?「好き」という言葉を使わずどれだけ表現できるか、みたいなことって作家の本領だと思うんだけどその極致だし、小佐内の人となりに合った言葉過ぎてただただ、凄い。

 

・「おわあ、こんばんは」って何!?見逃してる気がする何かを

 

・読んでて面白かったのは確かなんだけど、小鳩君の失敗の過程を振り返り、しかも丁寧になぞっていく話でもあったから、感情移入しちゃってやめて~早く終わって~とも思っていた。失敗に終わるのは分かってるから早く楽にしてあげて!

 

・でも同時に、この丁寧さが小鳩君の抱えてきた思いの重さや深さを現す何よりの描写でもあり。それをこれだけ読めるのはありがたさしかないけど、同時に過去の過ちをまざまざと見せつけられて間違いの元である自分の気持ちも追体験させられるとなったらやめてくれ~って感じ。悔しいけど感じちゃう!的な。これは違うか。

 

・学外の外の問題も扱い、それに伴って事件の内容も窃盗誘拐放火殺人未遂と日常の謎に収まらない小市民と、あくまで学内の話で外には関わらない・関われないとする古典部の違い。これはひとえに主人公、探偵役の性根の違いにあるんだろうな、と思う。

 

・解きたがりの小鳩君は、生来の性として謎解きを求めている。その結果として、学内に留まらず外の事件にも絡んでいく。対して折木は、省エネをモットーに理由がないと探偵役にならない。この二人の正反対とも言える違いが、それぞれの作品に大きな影響を及ぼしているんだ。

 

・だとすれば結末も相反するものになっちゃうんじゃないの、という嫌な気づきもあるけれど。でも古典部は、今さら~で折木が外への目線を持ち始めたからどんどん変わっていく未来もありうる。ほんとに楽しみだね。

 

・そして米澤穂信の、青春、学生生活が息づいている感じはどこからなんだろう。めちゃくちゃ凄い現役高校生が書いてます、と言われたら信じられないけど納得はできる。そのくらい、学生の物語を表現する雰囲気作りが上手すぎる。

 

・「制限」を書くのがめちゃくちゃ得意なんじゃないかな、と思う。中学生だからできることできないことをしっかり描写し、その人物像に基づいた考え方が展開されている。夜出歩けないとか、噂にならないよう別れて行動するとか、図書館で調べものするとか。そのリアリティを、こと細やかな描写で包んでくれるあたりが、米澤穂信に神奈川に来てほしい理由なのかもしれない。