軽快ブログ

「夏が来るね」そう言って君は

『Iの悲劇』読みました【感想など】

最近読んだブログで、タイトルに【】でサブタイを入れることで内容が分かりやすくなる、というTipsを学んだので取り入れていきます。

 

※ネタバレ多数

 

〇最終章のタイトルが『Iの喜劇』って凄いな。タイトル連動は気持ちいいし、確かに3人の組織で自分以外の2人が結託して自分の仕事を陰から邪魔していた、っていう構図は喜劇と言えばそうだけど、だとしても喜劇って言っちゃうんだ。そして序章と終章の終わりも被せているのもすげぇオシャレ。こういうメタ的な部分を弄って良いのが出来たときってめちゃくちゃ気持ちいいんだろうなと思う。

そして米澤穂信、謎解きをしてもスッキリしない(もちろん褒め言葉)。まあ事件なんて人の悪意から発生するので気持ちいいものではないのはそりゃそうではあるが、犯人が自白してスッキリ、では終わらない。加害者だと思っていたのが実は被害者だったり、その逆も全然あり、謎が解けてもなんとなく後味の残る結末に終わる。僕は氷菓というかなりエンタメ寄り(それでも今思えば正体見たりなどで片鱗はあったが)から入ったので、インターネットで氷菓はビターエンドで終わる、みたいな言説を見るたび不思議だったが、今となっては確かに……。としか思えない。できればハッピーで終わってほしいものだが、何ならビターも見たくはある。ちょっとだけ。

 

〇二章の謎、普通に分かった。ミステリーの謎が読書中に分かるのは滅多になかったので割と嬉しかった。

 

〇撤退戦/消耗戦、閉じる仕事/開く仕事

五章の主人公と弟とのシーン。仕事というものの判断軸に新たな視点が追加されたと感じた。斜陽産業か成長産業か、という違いでもあるか。そして地方自治体は職務上、比喩無しに命を選別している。割けるリソースは決まっていて、それを今生きている人のために使う。除雪ってマジ大事なんですね。西国で生まれ育ったため全く縁がないが、雪国の人はより行政の重要性を理解しているのだろう。

 

〇っていうかIターンって全然ターンじゃないじゃん。行ったきりじゃん。

 

〇地方で暮らすことは都市住民への搾取だ、という考え方。正直この視点は全くもったことがなくて、文脈としては都会民が払った税金が未来のない地方へ使われているのは無駄ではないか、という話である。僕がまだ学生という甘ったれの身分だからそう思うのかもしれないけど、自分の税金がどう使われようとあんまり気にならない、というのが本音だ。だってみんな払ってるし俺だけが損してるわけじゃないし、みたいな思考。逆に脱税とかはてめぇだけ楽しやがって、とまあまあムカつく。まあ税が自分たちの身の回りに還元されたところで気づかない、っていうのもあるんだろうけどな。

 

地方自治に、未来はあるのか

大層な書き方したけど、まあなんやかんやであるだろう。ただこの蓑石のような集落はどんどん消え、主要都市しか残らなくなっていくだろうし、その時に誰もいなくなった町はどう運営していくのだろう、という興味はある。少し地方自治に興味が出てきたな。

 

〇おっとり刀っていいよね。字面だけだと愚鈍でのろまで大柄な一人称がおらな侍を想像するけど、実際は真逆で大急ぎ、というギャップがある。やおら、とかと共通した良さがあるいい日本語です。