【台湾環島day6】再現性のある頂点【花蓮~宜蘭】

2024/3/4

・この旅行の目玉目的地、武嶺へ。公道で標高3200mまで行けるなんて、心躍らいでか(江戸っ子

 

花蓮から少し北上した後、太魯閣(たろこ)を経由して上がっていく。片道約80kmに及ぶワインディングに突入。

と思ったらいきなりの通行止め。片側交互通行という文化はないらしく、20分ほど待たされる。先頭にはバイクがどんどん集まって日曜の針テラス状態。ほとんどは観光客で、山歩きをするであろう格好の人が多かった。

 

・周囲と話すでもなく、写真を撮ったりキョロキョロしてみたりとなんとなく過ごす。そのうち、作業員の人が動き出してゲートを動かすそぶりを見せると、みんな自分のバイクの元に戻って出発準備をはじめ、場が騒然とし始める。なんかレース前みたいで緊張するな。周りに合わせるように、ヘルメットをつけてグローブをはめる。

 

・すると隣にいたインド系の夫婦が何か話しかけてきた。上手く聞き取れないのでヘルメットを外し、聞き返す。ジェスチャーと共に知らない言語でしゃべり続けるお父さんと、「そんなん言ってもわかんないって、」みたいな感じで諫めるお母さん(想像)。愛想笑いして場を保たせていると、前方から歓声が上がる。ゲートが解放されたみたいだ。しまった、出遅れた。……bye!と言って強引に会話を打ち切り、ヘルメットもそこそこにスタート。80kmのワインディング、速さを求めずにはいられないのだ。

 

・先頭から遅れること10馬身(機身?)ほど、ひたすら前を追う。のんびり走る欧州人、ビッグスクーターを駆るアジア系の集団を華麗にかわし、先頭集団の後ろにつける。CBR650R(台湾で一番見かけた大型)とホンダのネイキッド。いいコンビだ。排気量はこちらの6倍、馬力は10倍。モビルスーツの性能の違いが、戦力の決定的差ではないことを教えてやるッ……!

 

・普通に離され(敗北)唇を嚙んでいると、その2台がハザードを焚いて停まった。コバエみたいに付きまとったから殴られるかも、と覚悟したが普通に写真を撮るみたい。これ幸いと抜き去り、とうとうトップに立つ。左右にそり立つ断崖絶壁はめちゃくちゃ良かったので写真を撮るのが正解なのだが、当時の俺はリードを広げよう、と思って走り去ってしまった。大失敗である。

 

・なーんてね!全部フィクションですよ!

 

・楽しかったのは束の間、本当にずっとワインディングが続く。

標高は20km走ったら500m上がるペースでどんどん上昇。高山病に怯えながらも迫りくるカーブをちぎっては投げ、ちぎっては投げる。必死にペダルを漕ぐ自転車勢もちょくちょくいた。凄すぎる。

 

・ひとしきり登り、山頂までもう少し、というところで再び通行止め。

今度は40分待たされるらしい。こんな山中でやることもないしどうしようかな、と思っていたら後ろから大量のバイク集団が。

 

・大量のGSおじさんだった。

2~30台ほどのツーリンググループらしく、途端に周りを囲まれる。GSGSGSGSたまにK18、GSGSGoldWingGS……台湾の富裕層がこの場に一挙に集まったのか?普通に邪魔だし頭越しにめちゃくちゃ会話するしやや気分悪い。集団で走るおじさんライダーズはどこの国でもダルいな。

 

・普通にムカついたので、通行止め解除後に先頭切って走り出す。しかしコーナーからの立ち上がりで圧倒的差を見せつけられ、全員に抜かされた。こんな奴ら、SVだったら絶対負けねぇのに……。悔しいね

 

・最後数kmの坂がえげつなく、しかも空気が薄いからかフルスロットルでも30km/hしか出ない。それでも何とか走り切り、ついに到着。

標高3275m。人生における最高到達地点……というと縁起が悪いけど。物理的にね。

 

・今この瞬間、日本にいる誰よりも上にいる、というのはやはり気持ちいい。何者にもなれず、人生で成し遂げたことが特になくても、ここに立つだけで”1番”になれる。そういった昏い欲望が、人々を端っこに呼び寄せるのだろう。

 

・例えその頂点が時間作って金払うだけで誰にでも獲得しうるものだとしても、行こうとする意志と実際の行動力によって成し遂げたという事実が、それを確かなものにする。それは救いでもあるし、同時にやはり金と時間と行動力という比較的簡単に用意できるものによって余人に代替可能なものでもある、という傷を残す。

 

・じゃあ何をもってすれば、代替不可能になるのだろうか。金も才能も(任意のなにか)も、基本上には上がいる。自分にできることは、必ず誰かもできる。これは、マジで認めたくないけど、多分そう。だからひとつは、定量的評価ができない分野を攻めることだろう。例えば創作などは、甲乙の評価が人によって異なるからそのへんを曖昧にできる。それもあって、このブログをやってるみたいなところはある。

 

・長々と失礼したので、景色で浄化。

素晴らしいですねぇ~

 

・しかしまあここまでは、観光バスに乗って寝こけてたら誰でも達成可能。己の力をもってしてナンボよな、ということで登山する。

登山道は整備されているけど、やはりキツい。しかしこの苦しみが優越感につながると思って頑張る。

 

・合歓山主峰に到着。

疲れたねぇ。水も軽食もなかったのでかなり辛かった。帰りは適当にショートカットして駐車場に戻る。

 

・宜蘭へ向かう。海沿いに戻る手もあったけど、ダウンヒルあの距離は嫌なので山あいを抜けるルートへ。

ガソスタで見かけた花

・コンビニに寄って遅めの昼食。現地の店で食べるよりちょっと高いし味はあんまだし、そこまで効用が高いわけではない。しかし大きい街がないので妥協する。

 

・宜蘭(イーラン)到着。なんか名前が覚えやすい。

宿、めちゃくちゃ綺麗清潔で嬉しい。トイレバスルームが部屋内共用だったけど、結局自分だけだったのでモーマンタイ。定期的に個室状態のドミトリーを引けるのは本当にラッキーだったな。

・台湾6日目にして初めて夜市へ。

適度な人の多さで過ごしやすい。地元の神社の縁日みたいだ。行ったことないけど。

 

・一通りふらふらまわり、餃子屋へ。餃子は八角が使われてないので基本美味しく食べられるのだ。

焼き餃子を頼んだつもりだったけど水餃子が来た。美味しいからいっか。

・正直この日ぐらいからもう帰りたい気持ちが強まってくる。ホームシックとかではなく、日程に余裕があるから1日の走行時間が減り、宿で手持ち無沙汰な時間が増える。ついYouTubeやreelを見てしまい、日本にいるときとやってることが変わらない。そうなると何のために来たんだ、となり、落ち込む。結局移動式の引きこもりでしかないのか。

 

・256km。